眼鏡づくりに携わってきた経験から、
ものづくりのこと、メガネのこと、
日々考えていることをお伝えします。
メガネ工房ヨシモトについて
高校卒業後、18歳で眼鏡業界へ。
メーカー勤務を経て30歳で独立し、2006年に「メガネ工房ヨシモト」を開業。
気がつけば、眼鏡づくりに携わって約50年になりました。
製造の仕事を続ける中で感じてきた「もっと使いやすくできないか」という思いから、現在は自社製品「mky-Free Focus」の開発・販売に取り組んでいます。
ものづくりで大切にしていること
長年、眼鏡づくりの現場で仕事をしてきて、大切にしているのは「実際に使いやすいか」ということです。
作る側にとっては当たり前のことでも、毎日使う人にとっては大きな不便になることがあります。実際に使い、気づいたことを次の改良につなげていく。そんなものづくりを続けています。
仕事の中でも、『掛け替えない』ラクを
細かな作業では、手元が「見える」だけでは十分ではありません。
同じ「手元」でも、作業する距離や確認したい部分によって見る距離は変わります。
ほんの少し目を近づけて、細部までしっかり確認したい。そんな場面も仕事の中では何度もあります。
mky-Free Focusは、作業内容や見る距離に合わせて3種類のルーペ倍率から選べます。
必要な部分を、必要な倍率のルーペでしっかり見る。
仕事で使う道具だからこそ、そこを大切にしています。
仕事では、10cmの違いが大きい
1.4倍のルーペでしっかり見えていても、作業物に10cmほど近づくと、1.6倍のルーペが必要になることがあります。
細かな仕事では、「なんとなく見える」だけでは十分ではありません。作業する距離に合った倍率で、必要な部分がきちんと見えることが大切です。
だからこそ、作業内容や見る距離に合わせてルーペ倍率を選ぶことが大切だと考えています。
細かな作業を、しっかり見るために
仕事によって作業の内容は違っても、細部までしっかり見えることは、正確な仕事をするための基本です。
01 歯科・診療での使用
小児歯科の診療現場では、細部を見ることに加えて、広い視野を保つことも大切です。
実際に約1年間使用された小児歯科医からは、「軽さ」「視野の広さ」「フェイスシールドの内側でもルーペを跳ね上げられること」が使いやすい点として挙げられています。
02 検査・検品
検査や検品では、「見えているつもり」ではなく、確認したい部分がしっかり見えていることが大切です。
細かなキズや仕上がりの違いなど、わずかな見落としが製品の品質に影響することもあります。
作業する距離に合った倍率で、細部まできちんと確認すること。それが検査・検品の基本です。
03 模型・彫金・精密作業
細かな作業では、作っている途中に細部までしっかり見えていることが大切です。
「これくらいなら見える」とそのまま作業を続けても、あとからきちんと見直すと、思ったように仕上がっていないことがあります。
必要なときにすぐルーペを使えることは、作業の正確さを保つことにつながります。
工房こぼれ話
メガネのこと、仕事のこと、日々感じていることを、工房から少しずつ。
【ルーペについて】
見る距離が変われば、必要なルーペの倍率も変わります。
1.4倍
1.6倍
1.9倍
「倍率が高ければ、見やすい?」
ルーペは、倍率が高ければ高いほど見やすいというものではありません。
見るものとの距離や、どのくらいの範囲を見たいかによって、使いやすい倍率は変わります。
mky-Free Focusでは、1.4倍・1.6倍・1.9倍の3種類を用意しています。普段の作業距離や、どの程度細かく見たいかに合わせて選ぶことが大切です。
✅1.4倍 普段使いや通常の作業に
私は、作業場と普段の生活では、フレームに入れる矯正レンズを変えて2本を使い分けています。
作業場で使うフレームには、パソコンのモニターがしっかり見える度数のレンズを入れています。デスクワークでは、モニターを見るときはルーペを跳ね上げ、机の上の書類を読んだり書いたりするときに1.4倍を使います。また、通常の作業でも1.4倍で十分なことが多くあります。
一方、普段使いのフレームには、車の運転にも使える度数のレンズを入れています。室内では1.4倍のルーペを付けていることが多く、パソコンや手元を見るときはルーペ越しに、テレビなど少し離れたところを見るときは目線を上げて見ています。
車で出かけるときはルーペを外してポケットへ。買い物で商品を確認したり、スマートフォンを見たりするときに取り付けています。
✅1.6倍 もう少し細かく見たいときに
通常の作業は1.4倍で見えていても、ネジやパッドの調整など、もう少し細部まで確認したいときには1.6倍に替えています。
また、同じものを見ていても、一日中同じ見え方とは限りません。私の場合、夕方になって目が疲れてくると、1.4倍では見えにくく感じることがあります。そんなときにも、一つ上の1.6倍へ替えることがあります。
✅1.9倍 より細かな部分を確認するときに
私の場合、1.9倍を使う機会はそれほど多くありません。
細かな傷の検品、精密な部品の取り付け、機械のセッティングなど、細部までしっかり確認したいときに使っています。
普段の生活でも、手の爪を切るときなど、かなり近い距離を見るときには1.9倍を使います。足の爪なら1.6倍で見えても、手の爪は目に近づけて見るため、1.9倍の方が使いやすくなります。
同じように、トゲやささくれなど、小さなものを近くで確認したいときにも便利です。
自分が普段見る距離に合った倍率を
同じものを見る場合でも、見やすいと感じる距離は人によって違います。長年の見方の癖や、普段使っているメガネによっても変わります。
そのため、年齢や用途だけで「この倍率が合います」と決めることはできません。
まずはメガネ店でフレームに適切な矯正レンズを入れ、左右の目の状態を整えたうえで、実際にルーペを使って、自分が普段見る距離に合った倍率を選んでいただくことをおすすめしています。
mky-Free Focusの基本セットには1.6倍のルーペが付属しています。実際に使ってみて倍率が合わない場合は、1回まで無償で倍率交換できます。
また、どの倍率にするか迷う場合は、2種類のルーペを持ち、見る距離や作業内容によって使い分けるのもおすすめです。
【サングラスについて】
専用偏光サングラス
装着状態
跳ね上げ状態
私がサングラスを使うようになった理由
私自身、30代後半から40代の頃だったと思いますが、以前より光をまぶしく感じるようになりました。
強い日差しの日だけではなく、曇りの日でもまぶしく感じることがあり、車を運転するときにはサングラスを使うようになりました。
私にとってサングラスは、ファッションというより「必要だから使うようになったもの」です。
最近では紫外線から目を守るために、サングラスを使うことも広く勧められるようになりました。それ自体はとても良いことだと思っています。
ただ、その中で少し気になっていることがあります。
「濃いサングラスは良くない」のでしょうか
サングラスの話では、「濃い色のレンズは瞳孔が開くので良くない」「薄い色の方が良い」といった説明を耳にすることがあります。
もちろん、紫外線を十分にカットしない濃いレンズには注意が必要です。
ただ、レンズの色の濃さとUVカット性能は、本来別のものです。
私はサングラスを選ぶとき、まず適切なUVカット性能があることを確認したうえで、まぶしさや使用する環境に合わせてレンズの濃さを選べばよいと考えています。
そもそもサングラスには、紫外線対策だけでなく「まぶしさを抑える」という大切な役割があります。
そのため、濃い色だから悪い、薄い色だから良い、と単純に考えるものではないと思っています。
では、偏光サングラスは何が違う?
一般的なサングラスは、レンズの色によって目に入る光の量を抑え、まぶしさを軽減します。
偏光サングラスには、それに加えて偏光フィルターが使われています。
このフィルターが、路面や水面、ガラスなどから入ってくる特定方向の反射光を抑えることで、ギラつきを軽減します。
そのため、車の運転で感じる路面やフロントガラス周辺の反射、水辺での水面のギラつきなど、反射光が気になる場面で偏光レンズの特徴を感じやすくなります。
偏光サングラスにも注意点があります
偏光レンズは、すべての反射光をなくすものではありません。光が反射する角度などによって、効果の感じ方は変わります。
また、液晶画面などは偏光レンズとの相性によって、見る角度によって暗く見えたり、虹色に見えたりすることがあります。車のヘッドアップディスプレイも見えにくくなる場合があります。
必要なときだけ、サングラスを
mky-Free Focusの専用偏光サングラスは、必要なときにマグネットで取り付け、使わないときは跳ね上げたり、取り外したりできます。
普段使っているメガネからサングラスへ掛け替えるのではなく、必要なときだけサングラスの機能をプラスする。
日差しやまぶしさは、いつも同じではありません。だからこそ、そのときの状況に合わせて、簡単に使い分けられるようにしました。
【あっという間の50年】
眼鏡職人になろうと思って、この仕事を始めたわけではありません。
最初に眼鏡づくりの仕事に関わったのは、父が共同経営していた会社でした。特に深く考えていたわけでもなく、最初はアルバイトのような感覚だったと思います。
その後、鯖江の眼鏡メーカーに就職しました。
何も分からないところから
最初に任されたのは「調子取り」と呼ばれる仕事でした。
何も分からないところからのスタートでしたが、会社で働き、仕事を任されること自体が新鮮だったことを覚えています。
調子取りを覚えると、ロー付けや部品加工など、いろいろな工程を経験するようになりました。ひとつの仕事だけではなく、さまざまな部署を経験したことで、眼鏡づくりの仕事を一通り覚えることができました。
振り返れば、この頃にいろいろな工程を経験できたことが、その後のものづくりの土台になっていると思います。
30歳で独立
メーカーを辞めたのは30歳の頃です。
その時には眼鏡づくりの仕事を一通り経験していましたし、外注として仕事を受けることもできました。
「独立して何か大きなことをしよう」と考えていたわけではありません。他の業種へ移ることもあまり考えず、それまで身につけてきた眼鏡づくりを、そのまま自分の仕事として続けることになりました。
それから長い間、眼鏡の製造に携わってきました。
自分が使いたいものを作る
昔から、ものを考えることは好きでした。
50歳前後の頃、普段使っている度付きメガネに、サングラスを簡単に取り付けられないかと考えたことがあります。きっかけは、自分自身がサングラスを使いたかったからです。
そこで、度付きレンズとサングラスレンズに磁石を組み込み、必要なときに取り付けられる仕組みを考えました。
これが、私が磁石を使った眼鏡を作るようになった最初のきっかけでした。
自分が使いたいものを、自分で作ってみた。それが始まりでした。
mky-Free Focusも、始まりは同じでした
mky-Free Focusの原型となった、自分用に作ったメガネ。
改良しながら長く使用していました。
現在の「mky-Free Focus」も、自分自身が感じていた不便を何とかしたい。そこから考え、作って、実際に使いながら改良してきました。
ルーペやサングラスを必要なときに取り付け、使わないときには跳ね上げる。
現在の仕組みも、自分が使いやすいものを考えていった結果として生まれたものです。
特許についても、最初から取得を目的にしていたわけではありません。使いやすさを考えて作っていく中で生まれた機構が、結果として特許になりました。
流れの中で、ここまで来ました
振り返ってみれば、自分で「この道を進もう」と決めて、計画どおりに歩いてきた人生ではありません。
仕事を始め、いろいろな工程を覚え、独立し、その時々で目の前の仕事を続けてきました。気がつけば、眼鏡づくりに携わって50年近くになります。
もし下請けの仕事だけを続け、仕事がなくなったところで眼鏡づくりを辞めていたら、今頃どうしていただろうと思うことがあります。
今は、自分が使いたいものを考え、自分で作り、それを商品として使っていただく仕事をしています。
最初から目指していた場所ではありません。
それでも今、新しいものを考え、作る仕事を続けている。
そう考えると、少なくとも今は、眼鏡の仕事を続けてきて良かったと思っています。